THEインタビュー               稲城市ダンススポーツ連盟 居樹保朗 後篇

ここから後篇です!前篇お見逃しの方、連盟史の下に掲載してあります。

 

稲城市の会員を増やし、将来国体の選手を稲城市から出したい

―― これまでの連盟発足の状況、ダンスを始めたきっかけなどを話されたわけですが、現在の稲城市DS連盟の状況はどうでしょうか?(阿部)

居樹 難しい状況だねー。稲城市は隣が多摩市、川崎市で、周りが山に囲まれて、ニュータウンで人が入ってきても、人口がそれほど増えない状況です。その割には連盟の会員はいる方じゃないか。ただ、稲城市在住の会員は、5~6割くらいで、稲城市の会員が少ない。僕は生まれも育ちも稲城ですが、稲城在住の会員を増やしたい。

―― 他市のサークルも同じ状況のようですね。その市に住んでいる人は少なくて、周りの市から来ている人が多い。(阿部)

居樹 あのね、ダンスの特徴なんだけど、僕もいろいろ言われたんだけど、地元でやりたくない、隠しておきたい、ばれたくないという人が多い。

―― ダンスにはまだ抵抗があるんでしょうね。(木村)

居樹 古い考え方の人はね。ダンスは迷惑をかけない健全なスポーツだ---と今はいわなくてはいけない立場ですが、僕は職場に入ったときから全然隠さなかったもの。陰でどういわれていたかはわからないが。

―― 趣味は何ですかと聞かれたとき、社交ダンスですと答えた場合、女性は概ね好意的にとってくれますが、男性は、軟弱ととるかキャバレー的というふうにとる場合が多いと感じます。(阿部)

居樹 女性は案外ダンスをやりたいという人が多いが、そのチャンスがないからやらないだけ。男性は女性に比べればたしかにやりたいという人は少ないね。

 そういう意味で稲城の中でもダンスの健全さを理解してもらって、私の立場から言えば、国体がオリンピックを目指しているのですから将来稲城から国体にダンスの選手を出したい。将来ダンスがオリンピックの種目にもなる可能性もあるわけだし、そのとき今稲城に生まれた子供たちが行くわけだから、そういう子供たちを選手に育てたい。しかしジュニアを育てるのは大変。言いたいこと言うし言うこと聞かないしね。

 他の国では国がダンス教室を作ってジュニアから養成しているところもありますが、日本では企業の支援に頼っています。メジャーなスポーツは企業の支援があるのでいいのですが、ダンスのようなマイナーなスポーツはなかなか大口スポンサーがつかず不利な状況です。選手の生活のことも考えていかなければならないので難しい面もあります。そういう中でも何とかジュニアを育てていきたい。

ダンス界全体を活性化、発展させたい

―― 会長は、稲城市DS連盟の会長の他に東京都DS連盟の会長、日本ダンススポーツ連盟(JDSF)の理事でもあるわけですか、それらを区別するということはあるのですか?(阿部)

居樹 それは特に意識していません。やはりダンスが好きだから、ダンスを良い方向にもっていきたい、活性化させたい、技術進歩させたい、国体、オリンピックなどの桧舞台に出したい、そして20年、30年後これらのダンスの組織が衰退するのではなくダンス界の発展が基本です。それが稲城とか東京都とかというのではなく、世界的にもそうありたいと思います。

30年前は自分のことで精いっぱいでそんなこと絶対考えなかったのですが---(笑)。

―― 30年の進歩ということで(木村)。

居樹 特にこの10年で変わりました。部長のときは、理事長とか会長に文句ばっかり言っていましたが、自分がその立場になったら言えなくなっちゃった(笑)。

―― 視野も広がるでしょう。下にいるときはこのぐらいしか見えなかったものが上に立つと見えてくるということもあるのではないですか?(木村)

居樹 そうです。理事長、会長となると情報がすごく入ってきます。余計な情報も入ってきますが、その余計な情報が別なところで役立ったりします。それがまた新たな情報を得るきっかけとなったりします。

―― これまで話されたことが懸案のこと、力を入れていることとなるわけですが、その他に特に今考えていることはありますか?(阿部)

居樹 今年の4月からJDSFのPR推進本部の本部長となりましたが、これまでの社交ダンス、ダンススポーツを原点として、アジア大会、世界大会などにも参加して、全国にダンスを周知したり、理解してもらって、ダンス人口の増加を図っていきたいというのが懸案事項でありやっていきたいことです。先ほど話したように、趣味がダンスと言ったとき、「えっダンス」と否定的に驚かれるより、多くの人に「えーダンス、いいですねー」と好意的にとられるようにしたい。新聞とかテレビなどのメディアに三笠宮杯や東京インター、去年8月の国体の前夜祭の記事や芸能人の社交ダンスの番組などを積極的にとりあげてもらうようにしてPRしていきたい。また国会議員の方や役所の局長クラスと会う機会がたくさんあり、東京都DS連盟の中野の事務所を見てもらったりして、信頼を得るようにしています。

 

楽しくやるのがダンス上達の秘訣

―― 次に、少し気楽な質問ですが、ダンスの楽しさ面白さを高める秘訣は何かありますか?(阿部)

居樹 うーん、難しい質問だね。

―― うまくなれば面白いですよね。下手なうちは---。(木村)

居樹 下手は下手なりに面白いんだけどね。まあ、仲間やパートナーと仲良くすれば楽しいですよ。そして、うまくなろうと思わない。うまくなくてもいい、楽しく例会にきてやればうまくなるもん。いやいややっていたらうまくならない。

―― だけど逆にうまくならなければ、楽しくならないということもありますよね。(阿部)

居樹 だからね、前向きに楽しいと思ってやるのと、なんかいやだなーとかまた怒られにいくのかな(笑)とでは上達が違ってきます。前向きに楽しくあっけからかんとやっていれば実力は後からついてきます。僕の経験でも、ハッピーな気持ちでやったときはパッとできるのに、いやいややったときはうまくいかなく、トラブルになったり---

―― 「好きこそ物の上手なれ」ということですね。(木村)

居樹 まあ、楽しくだなー。楽しく例会にいき、練習ができれば、うまくなるし、また楽しくなる。

―― サークルの雰囲気も関係しますね。(木村)

居樹 雰囲気悪いと会員がやめちゃう。会員の少ないところはそういう理由もある。古い会員が集まっていて新しい人が入ってこないところはだいたいそういうところ、壁を作っちゃう。

―― 確かにそういうこともありますねー。(木村)

 

ダンスと日常生活 生活がすべてダンス。相手のことはかまわない

―― もうひとつの質問ですが、ダンスの経験を日常生活に生かすことがありますか?(阿部)

居樹 ちょっと意味がよくわかりませんけどー。私の場合、生活がすべてダンスですから(笑)。

―― たとえば、レッスン時、会長にいわれたことがあるのですが、ルンバのニューヨークのとき男性の右手のフリーアームはいくら強く振っても構わないが、女性と組んでいる左手は相手に影響させてはいけない---と何度か指導を受けました。これを日常生活に生かすとすれば、相手の立場を考えて、いろんなことを一生懸命やってあげるということに通じるのではないと考えたのですがどうなのでしょう?(阿部)

居樹 いわんとするところは分かるんだけれど---、ダンスというのではないが、長い人生の中で相手のことはかまわない!何をやっているのとか、どこに行っているのとか---ということをかまわない。もし何かやってほしいことがあれば、自分でやればいいだけ。それをあれやれこれやれと言うことはどうかな。我々カップルの場合、昔は互いにこまかいことに文句言っていたが、今は相手のパターンが分かっているから言わない。ワルツでナチュラルターンをやれば次は何かということは、相手は大体わかるじゃないですか。ダンスを日常生活に取り入れているという意識は全くないですね。

―― そうですか。ダンスを楽しく踊るためには、相手にあまり要求しないで、自分のやるべきことに最善をつくすということだろうと思いますが、とすると、日常生活においてもそれが生かせるのではないかと思うのですが---。(阿部)

居樹 特にこうと思ってはやっていないけれど、相手がやってほしいだろうなと思うことはやってあげてほしい。ゴミ捨てとか、女性が行うのは大変なことは自然とやるし、一方、相手は食事などこちらが望んでいることを察知してやってくれたりということがありますが、そういうことは、日常の普通の生活で特にダンスをやっていなくとも、やると思います。ダンスをやっていたから特に相手のことを考えるということになったかどうかはわからないですね。

昔からくらべると僕は丸くはなったよね。特にダンスを教えるようになってから丸くなった。やはり教える以上生徒さんたちに理解してほしいし、嫌われたくないし、そうすると言葉づかいも変わってくるし。

 

 今後10組位を目標にジュニアを育成したい。指導は若い女性が理想

―― 次の質問ですが、今後のことを考えジュニアの育成について考えられていると思いますが、稲城の連盟として何か具体的な構想をお持ちですか?(木村)

居樹 言うのは簡単で言うだけということで言わせてもらえれば、今生まれた子、これから生まれる子の20年先を考えてやっていきたい。でももしそうやろうとしても小学生くらいの子が実際何人集まってくれるか、誰が面倒みてくれるかということになってしまう。たしかに10人位集まり、そのうち男子が3、4人いればできちゃう。しかしそれらの小学生が中学生になってもやっている子はほとんどいない。今ジュニアで頑張っている子たちの80パーセント位は、親がダンスをやっている。今ダンスをやっている男子で自分からダンスがやりたくてやった子は10パーセント位ではないか。

 また、費用の問題もあります。理想的なのは、大学を出た女性のプロあるいはプロではないがダンスの好きな女性がお姉さん感覚で指導してくれることです。子供というのはちょっと上のお兄さんお姉さんが目標なのです。自分たちが教えようとしている地域もありますが、たいてい失敗している。教えている年配の人が動けないのに、半年もたつと教わっている子供たちが動けちゃうんだから(笑)。稲城でも10組20人位集まれば、本気になってやってみたい。

 

中高年の趣味としてダンスは最適

―― ジュニアを育成する一方、団塊の世代が65歳以上になって、老後をどういうふうに過ごすかということが課題となっています。そのときダンスがひとつの方策となるのではないですか?(阿部)

居樹 このところいろんな新聞、健康雑誌などでとりあげられているのですが、認知症とか足腰の衰えの予防に社交ダンスが一番いいと紹介されています。確かにそうなんですね。音楽聞いて異性の手を握れば、それだけで若さに関係する何とかホルモンが出たり、それと、ダンスに行くと思うと、手など身体を清潔にしたり、身なりも整えたりということで心身ともに若返る効果があると思います。知らない異性と接するとなると、きたない格好では来れないじゃないですか。半年位前に入会した女性で、最初はいわゆるおばさんという感じでしたが、周りの人たちの服装などを見てか、今はすてきな女性に変わりました。

―― 社交ダンスの愛好家として、ダンスの良さを広くアピールして、ひとりでも多くの人がダンスを楽しみ、日々の生活に活力を見出すよう願っています。

 

 本日は超多忙の中、いろいろお考え思いを語っていただきありがとうございます。同じ連盟に所属しながら、改めてまとまったお話を聞くチャンスがなかなかないので、今回の面談は、連盟の会員と近隣のダンス愛好家にとって良い機会であったと思います。(阿部)                                                                                                                           Written by T.Abe

 

次回の特集お楽しみに!!!

過去の動画はこちらです!